2016年マンクスGPに参戦して
レースを終えて
1907年より連綿と続く「Manx Grand Prix」は、今日では世界最古の、そして最も権威あるレースの一つと言われており、世界中から経験豊富なチームが殺到する中で、約300台(述べ台数)のエントリーに絞られます。
私たちは昨年のニューカマークラス2位の他申請に必要な実績を国内レースで積み、今年はManx GPのメインレースでもあり、事実上のマン島TTレースの選抜の舞台でもあるJunior ManxGP(排気量600㏄以下)とSenior ManxGP(排気量750㏄以下)に出場する事が出来ました。私達同様TTレースを目指して走っているトップグループチームは経験もスキルも高い為、この舞台におけるチーム山中の取り組みと結果はそのままTTレースへの射程を測る上でも非常に遣り甲斐のあるものとなりました。
30余日の滞在初旬よりコース攻略を進め、決勝5日前から始まるプラクティス時には先人たちの足跡を確かめつつ生活道路ならではの情報更新を詰める事が出来ていました。
プラクティスではコース攻略に手ごたえを感じながら、慎重にそして確実に前進していましたし、マシンのセットアップも、ライダーの進歩に合わせて進展させ、確実に良くなって行きました。決して冒険することなく、攻めの姿勢を忘れずに。
それは、タイムにも反映され、練習走行から走るごとにタイム更新し、練習走行1日目は、21分14秒743 でしたが、最終レースのシニアマンクスGPでは20分を切る、19分47秒605 平均スピード114.371mile(184.022km/h)と、2分30秒近くを短縮し、安全に速く走る為の計画的なレース運びをすることが出来ました。
今回の結果は、26位と入賞圏内に入る事こそ出来ませんでしたが、公道レースを含む相当数の場数を踏んでいる強豪グループの中、初参戦の我々がこの成績を残す事ができたのは偶然や奇跡ではなく、問題点の予測と出来得る限りの準備、未知のフィールドで遭遇する困難な状況でも目的に向かって諦めず考え行動を続けた事で先手を打ち好機に結びつけることが出来た場面を幾度も経験し、現場でも成長できた事、この取り組みが結果的に安全で、計画的なレース運びとタイムの短縮を達成できた実感がなによりの収穫と考えております。またチームとしてトップとの距離感も掴んだ上で、TTレースが射程圏内に入ったと感じました。又この成果は地元メディアにも採りあげられ称賛を受ける事となりました。
2017年参戦に関して
レース終了後、TTレースの主催者を訪ねて、来年のTTレースに出場させてもらいたい旨の嘆願書を作り提出しました。嘆願書には、車両製造国でありながらオートバイを楽しむ人は減少している事。人生をレースにかけてきたバイク乗りとして、マン島のオートバイ文化を感じ伝えるべく数人の有志でチームを組み、TTレースに参加する事を心に決め、活動している事。そして、126名の日本にいるサポーター、そしてバイク乗りの思いと一緒にマン島を走っている事を書きました。
後日、主催者側から連絡があり、TTレースのエントリーを許可して頂くことが出来ました。(TTレースは招待制でフィーは無料。)受理の確約は出来ていませんが、2014年の活動からエントリーも許されなかった事を考えると、大躍進であり、私達の思いが受け入れられたのだと思い、本当に嬉しかったです。
2017年は、TTレースにCBR600RRで出場するために活動いたします。
開催日は2017年5月27日から6月9日です。すべての準備が3ヵ月早まるので、大変忙しいシーズンになりますが、私達が嘆願書に書いた信念を胸に、そして、安全に速く計画的なレース運びを継続する為に、チャレンジのご支援を賜りますよう、何卒お願い申し上げます。
最後に
なにも持たない男と呼ばれている私ですが、自分の全経験の引き出しを全て開けた上で必然的に自分と真正面から向き合う怖さに立ち向う事となり、『危険の、その先に挑む』事が出来ているのは同様のチャレンジをスタッフ全員が行い、それを後押ししていただいている皆様のお蔭と感受致しておりますし、この体験を通してよりマン島TTへのチャレンジはゆるぎないものと成りました。
是非一人でも多くの方に、あの山中が出来たのだから自分にも『諦めなければすこしずつでも現実は動いてゆく』を感じて頂く事が出来ましたら、これに勝る喜びはないと信じております。
散文となりましたが最後までご熟読頂き、誠に有難うございました。
マン島ライダー 山中正之